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2009年 03月 24日
「どうする!空堀。」
―路地から見える空堀の将来を語るー ※空堀住環境魅力づくり研究会では、今回調査内容と併せてフォーラムでの議論、またその考察を冊子にまとめています。入手ご要望の方は、以下までお問い合わせ下さい。 「空堀住環境魅力づくり研究会」(CASEまちづくり研究所内)=E-mail:case@case-jp.com ■第一部(15:00~16:25) 設計課題作品発表から~未来に向けての架け橋~ プレゼンテーター:小島孜(近畿大学 教授) 調査報告:山本延行(空堀住環境魅力づくり研究会/福井大学大学院修士課程) 調査評価コメント:野嶋慎二(福井大学大学院 教授) 話題提供:向島、尾道に見る木造のまちへの多様な関わり方 真野洋介 (東京工業大学大学院 准教授) ■第二部(16:35~18:15) パネルディスカッション コーディネーター:真野洋介 (東京工業大学大学院 准教授) パネリスト:原田壽幸(全国建設産業協会会長/空堀地区HOPEゾーン協議会副会長兼事務局長) 松下岳生(空堀、田島北町に在住/ランドスケープデザイナー(Rojiroom代表)) 寺川政司 (空堀住環境魅力づくり研究会/CASEまちづくり研究所代表) 山根秀宣(からほり倶楽部長屋すとっくばんくねっとわーく理事/山根エンタープライズ㈱代表取締役) コメンテーター:小島孜 (近畿大学 教授) 第一部 将来を考える地域フォーラム 敬称略 あいさつ –六波羅雅一 からほり倶楽部は創立してから8年になる。今回のフォーラムでは、大学生の作品・大学の調査報告・向島と尾道の事例紹介を通じて、外部の人からみた空堀が見られると思う。このような外部の人の意見を聞きながら、私達も活動を続けていきたいと考えている。 Ⅰ未来に向けての架け橋 – 小島孜 小島 孜(こじま つとむ) 1943年生まれ、奈良市在住 近畿大学理工学部建築学科教授 上町台地を中心にコーポラティブ住宅「都住創」の企画及び設計や、門真市木賃住宅密集地での共同建替え「カルチェ・ダムール」の設計を手掛ける。阪神淡路大震災の後、芦屋西部地区「復興まちづくり」において、住民案に基づく土地区画整理事業を実現した。 ![]() ◆課題の背景 最近の学生は与えられた課題に対し、格好良い解答を示すのは得意だが、自分で課題を見つけるのは苦手であると言える。空堀をテーマに、学生に課題を課して6年になるが、初めの4年間は商店街の一角を対象に、「まちの縁側」と「全体の建て替え計画」という2段階で行った。その後の2年間は、開発の手が伸びてきた場所に対象を移し、第1段階として、長屋の雰囲気が残るエリアを歩き、最小限の取り組みで、最大限の効果を得ることを試み、萌(ほう)で作品の展示会を開催した。今回の学生の作品は第2段階となり、商業的な面も視野に入れながら、しかし、それだけでない建築的提案を行った。 ◆学生の提案の解説 ![]() ・ 長屋の防災性を高めながら生活する為に、空き長屋をオープンスペースとし、路地と路地を繋げる提案。 ・ 屋根の上を利用する提案。 ・ 立体的な長屋の提案。(スペースブロック的提案) ・ ユニット(cube+立体トラス)による、隙間を活かしながらの立体長屋の提案。部屋と屋根を立体的に繋げていく提案。 ・ 長屋をバームクーヘンとミルフィーユを併せたものと捉え、平面的な繋がりと立体的な繋がりをつくる提案。違う着想でアイデアを発展させようとした。 ![]() ・ 長屋の魅力は壁の共有と路地にあると考え、ジグザグに路地が計画されることから、ユニークな集合住宅の形態を実現した。 ・ 植木鉢のような形態を持ったものを重ね、屋上に植物が溢れるような提案。 ◆課題と展望 最後の提案のように、植物と人との関わる住宅という提案は良いかもしれないが、このモンタージュを見ると、手放しで喜ぶことはできない。環境に良いからというだけで建ててしまえるほど、地域が抱える問題は単純ではないと言える。 ![]() この課題を通じて、多くの学生が、路地を歩き、地域の人々とのふれあいをきっかけとして、路地を好きになっていった。多くの人を惹き付ける魅力がこの地域にあるという事は伝えていきたい。 Ⅱ接道不良長屋の更新に向けた課題と可能性に関する調査報告 – 山本延行 山本延行(やまもと のぶゆき) 1983年生まれ、福井市在住 空堀住環境魅力づくり研究会/福井大学大学院工学研究科修士課程終了3月予定 都市計画研究室で野嶋慎二教授に師事。野嶋の下、福井市田原町商店街の空き店舗を活用した地域交流拠点整備や運営に従事する。空堀地区の歴史的景観をもつ木造密集市街地に興味を持ち、修士論文に併せて「空堀住環境魅力づくり研究会」発足し参画、調査研究を進める。 ![]() ◆調査報告 12月に路地空間に関するヒアリング調査を行った。まず、保全的更新とは、現況の路地・長屋の雰囲気を尊重し、耐震・防災に関する改修を行い、あるいは、改修にたえない長屋の建替等を行い、魅力在る町並み整備を行う手法を定義した。マンションの建設が活発化し、人口が増えたが、町中まで開発の手が進み、路地や長屋がなくなり、まちの魅力が喪失している。住民からは、高層マンションの建設により、ビル風、日照、町並み等の問題が提示されている。 ◆路地空間の現状 空堀には歴史が感じられ、緑が多い、魅力に溢れる路地空間がある。しかし、これらの路地は、接道路不良の為、立て替えが困難で、空き室の増加といった不安がある。空き地や空き家が路地の内部にも多くあり、防災面でも問題になると言える。空堀において、道の総延長の約60%が路地であり、改修や更新を妨げる一因となっている。 ◆居住実態及び意識調査 現状と資料をもとに55ブロックの路地単位を設定し、ヒアリング調査及び目視調査を行い、以下の結果が見られた。 ・ 築年数の長さからも更新の難しさが伺える。 ・ 長屋の所有形態については、新規入居者の割合が増えてきている。 ・ 入居時から数戸同時購入し、構造や防犯に関する性能を高めている例がみられた。 ・ 改修動機は生活の経年的変化によるものが多い。 ・ 所有者の意志による路地空間に対応する改修が多く見られた。 ・ 長屋を維持する上での問題と長屋の活用意向を比較すると、協力体制が必要とされながら、実際には更新を実行することは難しい事がわかる。 ・ 路地単位毎に複雑な問題に対応しなければならない。コミュニティを活かしながら、路地ブロックごとに問題に対応する共同作業が必要と言える。 ★評価コメント – 野嶋慎二 野嶋慎二(のじま しんじ) 1960年生まれ、福井市在住 福井大学工学部建築建設工学科教授 地方都市の歴史的市街地や伝統工芸産地を対象に再生方策の研究、及び持続可能な居住地域の研究を行っている。また大野市の街なみ環境整備事業策定計画の立案、福井市田原町商店街の空き店舗を活用した地域の交流拠点「たわら屋」の運営、越前市の町家改修と活用企画などの実践活動を行う。 ◆まず空堀の地域において、それぞれの人が改修を繰り返しながら、ここに住み続けているという点が一番価値のあることだと感じている。それぞれの生活スタイルが空間に現れ、路地の中に入ると、それぞれの生活とその多様性が感じられる事が路地の魅力として感じられる。 一方で、路地の問題として耐震・防災の問題と、更新の難しさが挙げられる。例えば、耐震を行う場合でも、完璧な耐震改修と言えないまでも、小さな耐震改修により少しでも耐震性能を高めるという方法もあり、路地の魅力を失わずに更新する、様々な方法が考えられる。 共同建て替えをすれば、より生活環境は改善するかもしれないが、なにより、個人がどう住みたいかを知ることが重要と言える。だが、個人では解決しきれない問題に対しては、路地単位で解決していく方法がある。この地域には、路地単位に濃密なコミュニティがあるので、それを活かして、解決していくことが求められる。さらに、路地単位でも解決できない問題として、全体の問題がある。マンションができると、若い人が増えるというメリットはあるが、路地空間や長屋の魅力は失われる。このような地域の開発に対しては、全体としての計画も必要となってくる。からほり倶楽部や大学、様々な団体が協力体制をつくり、今後もサポートしていきたい。 ★山本氏の発表に対する質疑 ・ 質問:比較的若い人はどのような意向をもっているのか? ・ 回答:ほとんどが高齢の方で、若い人の解答は少ないが、単に長屋が好きだったから、交通の便が良かったから、という理由で長屋に住んでいる人がほとんどであった。賃貸の長屋に住んでいて、非常に住み難かったが、路地が好きだから住む、という例もあった。 ・ 質問:後継者がいない場合で、空き家になっているものは見られるのか? ・ 回答:継承意向が低いことからも、今後、空き家が増えていくことは予想される。 ・ 質問:からほりの人口はマンションによって増えており、長屋に住んでいる人は減っていっているという事実がある。調査を通じて、本当に、長屋に住み続けるメリットがあるように感じられたか?例えば、長屋は本来住み難く、バリアフリーなどを考えると、マンションが増えることは、住環境の改善に繋がっていると言えるのではないか? ・ 回答:バリアフリー等の空間的な属性よりも、路地空間におけるコミュニティによって得られる安心感の重要性を、長屋に住み続けている人は感じていると思われる。実際に長屋に住んでいる人が減っていることも事実だが、保全的更新の難しさが大きな原因であると考えている。 Ⅲ向島・尾道にみる、木造のまちへの多様な関わり方 – 真野洋介 真野洋介(まの ようすけ) 1971年生まれ、東京都在住 東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授/向島学会 事務局長 木造住宅密集市街地を対象に、市街地の歴史的形成過程と変容、多様な居住と活動主体のネットワークの観点から住環境再生について研究。2001年の「向島博覧会」をきっかけに向島学会に参加。現在、木造密集市街地の形成メカニズムと独自の魅力活用方法について研究中。 ![]() ◆始めに 墨田区と尾道は、どちらも歴史が深く、歴史があるまちなりの魅力があり、問題もあるという点では、空堀に通じる部分もある。このような事例を通じて、空堀を見てみるのも良いのと考え、紹介する。 ◆墨田区-向島 大震災以降にまちが形成されていった為、歴史としては空堀ほど古くはない。しかし、戦災にあっていないため、路地や長屋が多く残っている。あぜ道が道になっているため、道が雁行し、陸のヴェネチアと言われている。防災に関しては、雨水タンクが路地単位でつくられており、防災に対する意識・助け合いの意識が根付いている。空堀と同様に、空き長屋が増えているという現状がある。 からほりまちアートが2001年から開催されているが、向島でも向島博覧会というイベントが行われている。初めは、向島の空き長屋を、建築家などの協力を得ながら自力で改修するという活動だったが、このような活動がエスカレートし、人のつながりを生んでいった。 一方、空堀との違いとして、放火が非常に多く、約700件もの空き家の防災は、非常に深刻な問題である。マンションも多く建つが、小さな建て売りが多いという問題もある。同じ地域の中に、空き家と開発が共存しているという点では空堀との共通点を見ることができる。建て売り開発では入居者層に偏りが生じるため、多世代の住まいを目指して、模型を使ったワークショップを開催し、戸建てやマンションなど、多様な住まいがあるイメージ図を描いた。その図をもとに議論はできるが、誰が実際に事業としていくかという話には、なかなか進展しなかった。このような事業を実現するためには、少し法律を変える必要があり、セットバックを緩和し、安全確保に関する対策を練るという事を検討するという、一連の作業を行った。 ◆京島地区 京島地区は、戦前の木造住宅が一番多く、非常に高密な地域だったが、徐々に空き家が増え、防災上でも問題になってきた。安全確保のため、立て替えを促進させ、徐々に道を広げていったが、このやり方ではまちが良くなる訳ではない事に気がつき、まちの魅力について考えられるようになった。路地や長屋の魅力と、25年間の成果を発信していこうと、まちづくり委員会が地図を作成した。非常に繋がりの強い各町会を訪れ、地域の様々な催しに参加し、多くの話を聞きながら地図に反映させた。活動を続けてきたというまちの人の誇りと、空き室などの問題が同時に見える結果となり、地域内に話し合う場所をつくる事になった。 空き店舗率4割の寂しい商店街の空き店舗を一室借り、空き店舗の問題について、一軒一軒、聞き込みを行った。そのような聞き込みから、商店街の空き店舗の経緯を調べると、始めに精製食品などの店舗がつぶれ、その後飲食店を始め、飲食店の状態で廃業する事が多く、空き店舗のほとんどが飲食店である事がわかった。この飲食店を前向きに活かせないか、地元のメンバー以外の人を対象に広くアイデアを募集した。このようなイベントを通じて、多くの人が集まったが、人が集まったからと言って、すぐにまちが変わるわけではなく、当初、私達の活動は見向きもされなかった。しかし、やはり、人が集まったという事実は、地域の人に強い印象を与えており、5年が経過する中で、空き店舗を改修し新規店舗を出すという動きも生まれ、地域で話し合いの場が設けられるようになった。 こうして、5年の歳月を費やしたが、ようやく、地域の魅力をまとめた地図ができた。また、借りたい人と貸したい人を結びつけ、改修の方法や法規、値段などについて調整する建て替え相談も行った。この地図づくりと建て替え相談が主な活動であったが、それ以外にも、個人個人が勝手な活動を始め、その人達も戦力となった。そのような中で、この地域にとって、負の歴史であると思われていた、赤線(青線)という歴史を、1つの魅力として情報を発信していくようになった。改修したいという相談を委員会に持ちかけてくる人も現れ、耐震性や法規上の問題を解決しながら、実際に改修を行う事例も出てきたが、その数はまだまだ多くはない。路地を広げないまま建て替える方法についての話し合いを行うなど、様々な活動を行っているが、実際に建て替える事業へは、なかなか結びつかないという現状がある。 まちづくりNPOが行う、メンバーの半分が新規住民の活動は、地元からは関心を持たれていなかったが、建て替え相談や商店街活性化支援などを勝手にやり、新聞に載ったりもする。関心を持って貰うことが大切なので、とにかく多くの人に知って貰うよう務めた。商店街と一緒にチャレンジスポットとして、アパートの一室を借りて、練や萌のように完全に民間ではないが、チャレンジショップもやり始めた。このチャレンジショップでは、ある時はアンテナショップになり、またある時はギャラリーになる、四畳半のスペースを用意した。 地元の方(HOPE協議会に通じる)に対しては、調査を行い、共にまちをあるきながら、地域の課題を探った。そんななか、防災をテーマに、中学生・小学生を巻き込んだ防災訓練を始めた。そもそもこの地域では、防災の意識は高かったが、参加する世代が偏っていた。役所は指標によって安全・危険を示すが、墨田区の路地は、本当に危ないのか、実際に計測してまわるという活動も行った。このような活動から、基準法ではまかなえない、地域なりのルールや在り方を考えている。なんでも建て替えられるようになることが良い訳ではないので、非常にデリケートな対応が求められている。行政と地元と応援する者、それぞれが全く異なる意見を持っているのだが、そのような意見をぶつけ合わなくては何も変わらない。今は、色々な所に関わって、少しでも接点を持てるように取り組んでいる。 ◆広島県尾道市 まず、空堀との共通点として、石畳の路地が残っていることがあげられる。空堀は台地だが、尾道は坂が急で、山と川がある。特に山側斜面の長屋が、高齢者には暮らし難く、空き家が非常に多くなってきている。ロープウェイに乗って、空から古い町並みを見るという黄金の観光コースがあるが、実際に見られている長屋は住まい手が少なくなってきているという現状がある。山側斜面の道路の9割が車の入れない路地になっており、改修や建て替えにも問題がある。空堀と同じように借地の長屋が多いが、ほとんどが、お寺が所有する土地に建てられている。 本当に歴史のある建物が多いので、建物を改修保全するNPOが立ち上がっており、若い世代が、活動できるまちを目指して、子育て支援なども行っている。空堀と同じように、景観面での修景事業があるが、実際には使われておらず、NPOはそこに目を付け、新規入居希望の方に修景事業を採用するという方法を探っていた。現在、やっと、町並み形成保護事業を使って、長屋を1件、改修している。このような事業を使う場合、歴史的価値についても書かなくてはならないので、何処の家でも良いわけではないが、新規入居や住み続けたいという人を支える方法になるという点では評価できる。まちがまわっていくようにするためには、新しく住み始めた人が、まちの課題を知り、次の担い手になってもらわなくてはならない。公共空間に交流空間を設けるという活動も、少しずつできてきている。一枚岩になることが難しいからこそ、それぞれのやりたいことがまちの中で実現し、バラバラの活動の重なりによって、創造的な地域課題の解決へつながらないか、という点に魅力を感じている。 将来を考える地域フォーラム 第二部 by karahori-nagaya | 2009-03-24 20:40
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